等等日記

北京留学の日々、中国語学習など

北京で日本語を話して

日中友好の架け橋になる人材」という目標のもとで私は今奨学金をもらって生活している。これが人生で初めての長期留学。これまで学生時代に留学生と親しくしてきたけど、それでも正直この言葉がどういう具体性を持つのかイメージできていないところがあった。

何か講演会に参加する?交流会に参加する?興味のある分野で達成できて貢献できることがあると信じて留学計画を立てつつも、この目標のため性格を変えてまで交流の機会を持つのは正直、しんどい。アクティブな人は可能だろう。でもそれ以上となると自分なりの努力はしても難しさを感じる毎日で、すごい人ばかり目に入るのが人生ってもの(※言い訳と分かりながら書いています)。

清華大学は全く異なるといっていい環境だが、北京において市井の対日感情は決していいとは言えない。私はタクシーで女一人「日本人だ」と言うのが嫌だ。なぜなら日本人というだけで嫌な目にあったことがあると言う人を知っているし、密室状態でそれが起きたら怖いから。

 

しかし、意外にも日本人同士日本語で会話していると声をかけてくる人は本当に多い。

例えばライブハウスは私にとって1番の社交場。音楽を聴くのが楽しいのはもちろん、見知らぬ人でもブリーチした髪を褒めてくれるし、自分もイケてる格好の人がいたらノリで「素敵ですね!」とか言えちゃうようになった。二十代後半でこんな価値観の変換があるなんて本当にハッピーだと思う。

そして本題、日本人の友だちと列に並んでおしゃべりしているだけで「日本人ですか?」と日本語を学んだり日本のカルチャーを好きな人に出会う。そもそもライブハウス自体不思議な場所で、異様に高学歴や留学経験者に出会うのは余談として残しておきたい。端的に言って生活に余裕のある人の集まる場所だ。

ちなみに北京のライブハウスについては趣味のことを発信するブログで密かに(?)紹介中。

北京のライブハウス探索①SCHOOL学校酒吧 - 永遠に準備中

 

 

たとえば好きなバンドのファン仲間と話していたら知り合い、やり取りの中で人形の「ブライス」が好きだと教えてくれた人。もともとアメリカで発売されたものだが日本人気が高く、ドールをカスタムする作家が多く存在する。そのような作品を見るが好きだとお気に入りの写真をいくつも見せてくれた。中国でもカスタムドールの展示会があるらしいのだ。筆者は幼少期からブライスの写真集を眺めることが大好きなので、こんな偶然もあるんだという話で盛り上がった。バンドで繋がっているので趣味が似ているのかもね、と。

北京のライブハウスで「日本人ですか?」と声をかけてくれた天津の子。日本語を勉強していたらしく、私と同じ音楽サバイバル番組のファン。嵐が本当に好きだそうで、腕に大野くんの自画像をタトゥーにしたと教えてくれた。とってもおしゃれで素敵な愛の表現だと思った。

ライブハウスではないけど、クラフトビール屋でカウンターに座っていると店員さんが宇多田ヒカル倉木麻衣鈴木亜美…と日本の音楽が大好きで少し日本語を勉強していたと教えてくれた。コロナ前は日本旅行が楽しみだったそうで、関西に残る歴史建造物が好きだと語ってくれて、多岐にわたる趣味の話が本当に面白かった。

 

 

こんな風に日本に興味があると言ってくれる人は意外にも多く、それぞれが自分なりのストーリーを持っていて話をしてくれる。日本語を話せる中国人だけが日本に興味を持っているわけじゃないし、中国語を勉強したことでこうやって話を聞ける機会が何倍にもなったんだと当たり前のことをしみじみ感じる。

同時に自分がこういうことに興味があって中国語を勉強したんだ、と話す時間はそんなに長くない。おしゃべりな性格もあって「日中友好の架け橋」というと自分から発信して応えてもらうことが主体と勝手に思っていたけれど、それは違った。中国には人が多い分、こういう話をしたいという人がもっともっといっぱいいるんだろうなあとも思う。

架け橋なんていう大それたものにはなれないけど、こんな風にいろんな人の話を聞くことはやっぱり面白いし言語を学べる機会に出会えてよかった。日本人というだけでその人の大事なストーリーを聞かせてもらえるなんて、なんと贅沢なんだろうと思う。