等等日記

北京留学の日々、中国語学習など

四川旅行記①成都ビエンナーレ

 

空港には早めの到着を

週末の小旅行は朝5時起床から始まった。2週間前におさえたにしては比較的安めのチケットは、往々にして時間や場所に難ありだ。昨晩にパッキングを終わらせたバックパックを背負い、肌寒い中郊外の北京大興空港へ向かう。

1時間とはいえ、郊外にある空港までは1時間ほどかかる。7時45分発の国内線のため、ちょうど1時間前に空港に到着しカウンターに直行するとスタッフに「急いでね!」と声をかけられた。

中国国民には身分証カードが普及しており、その分外国人は別の認証を通る必要がある。しかしその列にうまく誘導してもらえず、列を抜かされながら荷物検査を終えてチェックインカウンターに向かうと既にギリギリの時間だった。次は少なくとも1時間半前までに空港着を誓う。

大興空港のショップ、前に比べ多くの店がオープンしていた

 

成都を歩く、食べる

成都に着いて、地下鉄とレンタル自転車でホステルへ向かう。40Lのバックパックを背負っても自転車は乗れるので便利だといつも旅行の度に思う。

本日の宿は成都米唐成年旅舎。

10元高くして6人部屋を予約した(一泊60元)。スタッフは外国人のチェックインにも慣れた雰囲気。トイレは中国式の平らなタイプで、でも大学の宿舎生活に慣れた者にとっては許容範囲の清潔さだった。

 

宿に着く頃にはもう昼だった。福岡の人が成都でスパイスカレー屋を営んでいて、繁盛しているらしいのでタクシーで向かう。成都はどうやらタクシーが安く、15分ほど乗っても支払いは10元を超えない。

山下元气咖喱は古い建物をおしゃれにした雰囲気で、外のカウンターでカレーを食べれる小洒落た雰囲気が良い感じ。4人の若者がそこそこダラダラしながら客を待っているのは中国らしい風景。

スパイスカレーのセットの魚のフライは揚げたてでアツアツ。付け合わせの甘酸っぱいアチャールが美味しい。どうして中国でスパイスカレーが流行していないのか私はずっと謎だった。このお店は地元にも受け入れられているけれど、久々に食べると中国のスパイス料理とは全く違うんだなと当たり前のことを意識した。

お腹いっぱいになって満足したけど、もっと頭が痺れるくらいスパイス強めでもいいかな、と大阪の刺激的なカレーに慣れた者は思うなどした。

 

店先に金魚

 

ここから自転車で15分ほど移動して食後のデザートを食べに行く。お店に近づくにつれて、オシャレなカフェや美容室、綺麗な犬を見かけるようになる。若者の街と表現されるだけあって、首都の北京にもないような洗練された店が並ぶ。

口コミサイトで人気のChez QUNQUNジェラート店。何を頼むか迷っていると、両腕に入ったタトゥーをオシャレに見せるハスキーボイスな店員さんが試してみます?と訊いてくれた。結局選んだのは”木姜子酸奶(ヨーグルト)”、”无花果三重奏(いちじく三重奏)”で32元。

木姜子は貴州地域でよく使われる香辛料で、レモングラスと胡椒のような風味。甘酸っぱいヨーグルトとよく合っている。無花果は独特な青臭い果物の香りがしっかりする。盛り付けさえもセンス溢れていて、上に乗った小さい粒はフィンガーライムというものだそうで初めて口にした。全体的に甘さ控えめなのもあって口の中がベタベタしないような仕上がりなのが嬉しい。

店内もすごくかわいくて、落ち着いた雰囲気に癒された。

 

圧倒されっぱなしの成都ビエンナーレ

今回成都を訪れた目的のひとつは、2023年11月末まで開催の成都ビエンナーレを観るため。

まず館の成都市天府美術館は2021年設立、公園と一体型の建物で、壮大かつ開放的な環境と相まってとても美しい。

時間と引力をテーマにしたビエンナーレは、部屋ごとにキュレーターがそれぞれおり、丁寧なステイトメントが用意されている。作品は共通点を見出しやすいすごくシンプルなキュレーションで、とても見やすかったと思う。ドクメンタで展示されたものを再現するとか、海外からの作品も多くあり(なんとホックニーのデジタルで制作した絵画も!)、テーマに合わせてしっかり作品を集めることができる環境にちょっと感動した。

2つの美術館、それぞれ3階ある会場を使っての大きな展示はしっかり観るだけで4時間以上かかった。

 

私が個人的に好きだった作品をいくつか。

罗敏(Luo Min)による《The Reading Record》は、敦煌壁画をサンプリングし、コラージュ帳のようにまとめたもの。未来の考古学というタームの中、歴史を選び取って再構成することや、この先に何が残っていくのかについてふと考える。そして京都で活動する嶋春香氏の作品を思い出した。

 

林岗(Lin Gang)による《大天使》は、木彫りの天使。最近石窟ばかり見ているので、不思議と造形に中国っぽいものを感じる。簡単な造りだけど神性を感じさせてくれて、祈りってこういうものなんだなと思う作品だった。

 

王鲁炎(Wang Luyan)による《The Living Dead》。すごく頼りない木材(割り箸とかに似ている)で持って作られた彫刻。頼りない関係の中、淋しく生きる人間たちを表現する姿がすごく切実に思えた。ジャコメッティを思い出す。

 

Tiktokや快手のようなショートビデオを使った作品、中国の神話からの引用…と中国らしい現代美術作品をたくさん見れたのも嬉しかった。

 

石友と合流

晩御飯は杭州の芸大に留学していた、今は成都に滞在する石友に合流(彼女は週末ごとに石を眺めに行くアクティブな方)。

私がリクエストした四川名物の豚足スープは臭みもなく、プルプルの脂身がおいしい。湿度のおかげだろうけど翌日肌の調子が良かったように思う。ここで意外と美味しかったのが自然な甘みがよく出ていた玉米粑粑という、とうもろこしの蒸しパンだった。

ビエンナーレの感想や成都という場所、杭州や北京、留学…と話に花が咲き、明日からの旅行に期待が高まる。明日の朝のバス停での集合時間を相談した結果、早めに解散して、ぶらぶら街を歩きながら30分ほど自転車に乗ってホステルに帰る。

 

ホステルでは0時にフルメンバーが揃うようなゆるさだった。皆いろんな旅が交差する地点であることを話す。少々まだざわつく中でも蒸気でホッとアイマスクのおかげで無事に爆睡し、この日は充実の長い成都旅行1日目を終えた。