ご当地料理”米卷”を朝ごはんに
安岳2日目の朝。昨夜はそんなことなかったのに人の声がうるさくて目覚める。どうやらおばあちゃんが孫に色々と話しかけている…のだが、なぜドアを開けたままやるんだ?苦笑いしながらぼんやりと起床した。
今日は車で1時間ほど離れた場所に行かなくてはならない。7時半に起床し身支度を済ませチェックアウトした。友人が見つけてくれたこの地域で食べられる朝食を食べに行くため、バックパックを背負って10分ほど歩いた。
朝の安岳も活気がある。8時でも通りに人が集まっていて、むしろちょっと人通りが落ち着いた雰囲気さえあった。通りの奥に目当ての屋台はあった。
米卷というらしい安岳の郷土料理は棒状になったものを切り、くるくる丸まった元の状態を幅広面の形に解いて食べる。米からできていて凉粉とも違うらしいが、プルプルツルツルとした食感が独特で美味しい。普通に辛いし、味付けされてネギが乗っているだけだが謎に美味しくてクセになる味だった。
タクシーを呼ぶ前に昼ごはんにするために金木犀の蒸しパンを買っておく。基本的に観光地になっていない限り、山の中だし石窟の周りで食事を摂ることは不可能であるため保険として、の備えだ。
④半边寺
すんなりタクシーが呼べて乗ってみるとすぐ、電話しながら運転手さんが大きい道の真ん中で止まったのでドキドキする。方言が強くて聞き取れない…がなんだか向かう場所について話している気がした。
前日もだったが安岳の石窟は現在工事中の場所が多く、3日目最初に行こうとしていた場所の华严洞も「工事中なのでご協力ください」という看板が出ている状況なのは知っていた。それでももしかして入れるかも?ご協力って意味広いよね?なんて前日の大冒険に私たちはしっかり味を占めていた。賭けで行ってみてダメだったら諦めようとしていたのだ。
運転手さんは色々と問い合わせてくれたようで目的地には入れないとのこと。気を取り直して近くの第二の目的地である半边寺に行き先変更した。私たちが日本語で話していたので「どこの少数民族?」と聞いてきた運転手さんはえらく私たちの話す中国語を誉めてくれて、その後も優しく伝わるよう会話してくれたのでこの人ならいいんじゃ…とその先の石窟に向かう足として半日お供をお願いした。結果「こんな山奥にいちいちタクシーは呼べないからね」と言ってくれ、走った分だけ請求する(しかもメーターが壊れていたので、最後一緒に地図アプリを見て計算した)という優しすぎる運転手さんだった。
まず向かった半边寺はちょうど撮影隊の人たちが大勢いて、「日本(四川訛りでズーベン)から!」と驚かれながら迎えられることになった。
かなり年季の入った小さな境内に入ると6メートル近い大仏に圧倒された。微笑む様子が優しく、ふっくらとした手と流れるような衣の表現に目が離せなかった。
入り口側に老僧の居住スペースがあり、ここで生活しながらお寺を守っているんだ…とジーンとする。
寺の奥には道教テーマパークらしきものもあり(詳しくないので不明)、なかなか楽しい鑑賞体験となった。
⑤孔雀洞
車で25分ほど移動していると、お葬式の行列に遭遇。北京ではほぼ見ないので、白装束の人々に続く黄色の装いの人々、チャルメラを吹く人の姿に本当にこの風習はあるんだ!となった。
孔雀洞に到着すると、ここでもラッキーなことに先客がいたのでスムーズに中を見ることができた。5メートルほどの大きな孔雀明王。重慶大足石窟でも孔雀明王を見たが比較的見ることの少ない信仰ということで、大足石窟と安岳石窟の関係の近さを思う。こちらも微笑みをたたえた優しい表情だ。
ガッチリとした体の作りと背景の装飾の細かさにうっとりする。よく吠える大きな犬に怯えながら、20分ほど満喫した。
⑥茗山寺
最後は車で10分ほどの茗山寺へ。こちらは山道を通って移動することになった。ここで午前中お世話になったタクシーの運転手さんと別れることに。まさに一期一会な出会いだな、としみじみする。
こちらも寺は工事中だったが、メインとなる部分は自由に見ることができた。どの像も精密なつくりで見ても見ても飽きない石仏群だった。
ここは風化した石仏が有名。地層の色の美しさや砂の質感が伝わってきて、自然の産んだ美しさはどうしてこうも人を感動させてくれるのだろうと思う。
風化が進んでいるとはいえ、彩色もよく残っていた。ちょっとおちょぼ口気味なの、ツボ…!
それから大自然の中で木漏れ日を眺めぼーっとしたり、スマホをいじったり、見たことない植物の名前を調べたり…まるで頭をマッサージされているかのような気持ちになった。
旅に波乱はつきもの
前日に空港までのタクシーは手配済み。さあ13時になったと車を待ち構えていたら…まさかの時間を5分すぎてからのキャンセル。正直焦る。空港に帰れないのが一番怖かったからめちゃくちゃ早い時間に 設定して置いたとはいえ、だ。
予約忘れてたんじゃないの?!と友人とギャイギャイ言いつつ、お腹が空くと短気になって良くないから買っておいた蒸しパンを食べる。とにかくその場でもう一回拼车にチャレンジしてみたらすぐ配車された。高速代でプラス100RMBを支払い、快適な帰路となった。かなり緊張していたらしく、空港でタロイモミルクティーを飲んだ瞬間どっと安心する感じがあった。
最後はあまり北京の自分の行動範囲では見かけないすき家が空港にあったので、牛丼と焼きサバを味噌汁啜りながら食べた。チェーン店はリーズナブルな価格でほぼ変わらない日本の味を楽しめるから好きだ。いろいろ心情の揺れが多かった分、日本食に救われた。
北京に着いたのは23時、大学宿舎に戻ったのは日付が変わった後のことだった。よく遊びいろんなものを見た3日間。四川という場所のパワーに魅了され、そして中国国内を旅行することを更に好きになった旅だった。