等等日記

北京留学の日々、中国語学習など

四川旅行記②安岳石窟合宿1日目

 

ドキドキの高速バス乗車

6時に眠い目を擦って起きると電話が鳴った。6時半に予約しておいたタクシーが出発したとの知らせが来る。しっかりしてるなあ、と思いながら静かに準備をした。今日は朝から成都から、石窟美術で有名な安岳という町に高速バスで移動する。

高速バス乗り場には7時前に着いた。携程旅行という旅行会社アプリを通じて(外国人は身分証の関係で直接買えないやつだった)購入したバスは7時45分発。前回重慶でバスに乗った時10分前に到着し、乗車直前に外国人はチケットの発券が必要だと振り回された経験は私にとってかなり嫌な思い出となり、この記憶が私を急がせた。ちなみに友人はもっといろんな目に遭っていたので私より早かった。

そもそもバスの行き先もショッピングモールの名前で、アプリ上の地図でも場所が表示されないという辺りが極めて適当でドキドキする。いけるだろうか、と友人と何度も言いながらカウンターに行くと、台にほぼ隠れるみたいにして座っていたお姉さんがテキパキとパソコンに発券番号を打ち込んでくれて、スムーズにチケットが発券された。

ブログを書いていてこの写真を見ていると12306という鉄道予約サイトから予約できる気がする…ので次回はそれにチャレンジしたい(旅行をレベル上げだと思っている側面があります)。

一気に安心したところでとりあえず朝ごはんに甘くもしょっぱくもない素朴な緑豆がゆを啜る。

 

高速バスは待合スペースでバスを待ち、時間になると改札のようなゲートを通るシステム。中国人民は身分証を使い自動でゲートを通れるけど、外国人はここでもまた係員のいるカウンターに行きパスポート番号を打ち込んでもらう必要があった。物珍しさにわらわらとおじさんたちが冷やかしに集まるが、方言がきつくて何を言っているのかさっぱりわからなかった。

私たちは高速バス乗り場からお行儀よく乗ったけど、なぜか途中で人が乗ってくる。はて?よくわからないシステムの中、いつの間にか満員の状態で3時間ほどバスは走り、目的の安岳に着いた。

 

テルチェックインでもドキドキ

ホテルにチェックインしようとするとロビーのお姉さんは外国人の宿泊手続きは初めてだと言う。嘘やん、と脱力しつつカウンターの中に入って一生懸命説明しながら一緒に情報を入力した。お姉さんは思い込みは激しいタイプだったが頑固な人ではなく、何より泊まれたのでよかった。なんというか幸福を感じるハードルがどんどん低くなっている気がする。

この経験を経て、私は中国でホテルに泊まる上での注意をまとめた記事を残すことになったのだった。

buyaoc.hatenablog.jp

宿泊した安岳千吉酒店の場所は中心地にあって動きやすい。この場所に来た目的通り、私たちは早速石窟巡りをしに出かけた。

 

①圆觉洞

ひとつ目の净慧岩は地図通りタクシーに乗り目的地に着くとただの道で、どうやら一般公開はされていない。後から調べるとかなりがっかりな修復をされていたらしく、見れなくて良かったような、それはそれで残念なような。

このままさっき見かけた圆觉洞まで戻ってくれる?と言うと運転手は笑いながら引き受けてくれた。そして今月から安岳は観光地の入場料が不要になったんだよ、ラッキーだねと言いながら丁寧に入口を教えてくれる。どうやら観光キャンペーン中らしい。この時「この旅ツイてるぞ」と予感した。

安岳はレモンの里としても中国で有名という新しい情報を得つつ、立派な門をくぐって石仏を見る。休日かつキャンペーン中とはいえ、正直人はすごくまばらだ。

圆觉洞で残されているものは唐〜宋時代のもの。およそ3世紀から始まる中国の石窟美術史において、安岳石窟のものは中国に受容されてからだいぶ時間を経たものだ。

見上げて首が痛くなるような大きな観音像たち。ぺったりしていて立体感のない衣服のひだをみるとかなり形式化されているように感じる。細かな装飾がとても美しくて夢中になった。しかし平面的ながら形の連なりが美しくて感嘆する。

ここでは厳しい表情が印象的な毘沙門天像が珍しく、有名らしい。

入り口がテーマパーク化していたことに反し、割と自然なまま山の側面に石刻があるのを1時間ちょっと満喫し、さすがにお腹が空いたということで、タクシーで中心部に出て腸粉を食べた。

コーンと卵の優しい味。四川の辣椒(唐辛子の調味料)は香りがあって、さすがにかなり辛かった。

 

②卧佛洞

お次に唐代最大の涅槃像で有名な卧佛洞へ。中心地からは少し離れていて、圆觉洞から卧佛洞まではタクシーで40分ほど。

ここは地質公園といった方が近いような気がした。安岳の地層は見ているだけで面白く、自然の美しさに圧倒される。色鮮やかな鳥がのびのび生活していた。

巨大な涅槃像はレリーフ的表現が面白く、平面と立体の表現の間が気になる。他にもいろんな装飾が美しい石刻を見れたが、ほとんどの顔は失われていた。

 

③千佛寨

本日の石窟巡りを〆る千佛寨へ向かうと絶賛工事中。それでも入れないとか見なかったしな…と図々しく石窟はどこから見るの?と問うと、お寺の線香を売るお兄さんが「大雄宝殿の裏から」と言う。見にいくと…これは明らかに猫が通る道だ。しかし人間の通る方の道の先には“工事中につき立ち入り禁止”の文字。覚悟を決めて獣道を行くと、工事中の壁の内側に入ることができた。

正直ここで捕まったら留学は一瞬でゲームオーバーだ。結局、帰った後中国のSNSの様子を探ると皆この道から観光していたから心配は不要だったのだが。かなりドキドキしながら、よく滑る階段をおそるおそる登った。

さながら大冒険だ。全然他に観光客はおらず、静かな中石仏を見る。風化もかなり進んでいるが、いつのものか不明だが彩色も残っていて、とても贅沢な鑑賞体験となった。

明らかに何か物語が描かれている部分があり、仏教美術の中の動物の表現が好きなのでとても気になった。パッとなんの場面と言えるようになればもっと面白いのになあ(わかる方いらっしゃれば教えてください)。

竹が組まれた工事現場にもためらいつつ突撃した。木漏れ日が美しくて不思議な景色に感動した。

こういう時2人だとちょうどいいと思う。私はビビリで、友人も慎重だがどちらかがひるむとお互いを鼓舞しあえるから。ということで冒険大成功だった。

鶏と四川弁でおしゃべりするおばあちゃんを眺めつつタクシーを待って、千佛寨を後にした。

 

楽しい回転火鍋

夜ごはんはホテルのお姉さんに牛肉の火鍋が美味しいと聞いて、散歩がてら10分ほど歩くことにした。なんとなく、街がイキイキしていて活気がある。なぜかこの街は北京で住む海淀区よりも活気を感じたのだった。

道に豪快に置かれ売られる生姜

舌が出てますよ…

途中で友人が階段の下が盛り上がっていることに気づいてくれ、近寄るとそれは具が回転するひとり火鍋だった。あまり北京で見かけない風景に興奮し、夕食はここに決めた。

辛いものが得意でない私はトマト味のスープを選び、好き勝手に具を選んで鍋に入れていく。向かいの小学生男子がよっぽどタケノコが好きなのか皿の中身全て浚っていて笑ってしまった。

串は数えるために専門のアプリがあるらしく、それを使っての会計だった。1串につき3角5毛とかだったと思う、日本円にしてひとり800円くらいで火鍋が楽しめてしまった。

安岳はレモンが有名なので、6元しかしないレモンティーをゲット。レモンの香りが豊かですごく美味しかった。

 

それからは次の日の帰路を全く考えていなかったので(?!)鉄道チケットを間違って購入してみたり、高すぎるタクシー代に絶望したりしていたが、最終的に拼车/顺风车といわれるシステムを発見した。これはつまるところ乗合タクシーである。

なんとか外国人でも予約できる方法を見つけ(didiはダメだった、携程旅行に感謝)、帰りの空港までの道筋を計画し、この日は眠りに就いたのであった。